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代表取締役の住所はどこまで伏せられる?

2024/05/10

弁護士の貝原です!

今年のゴールデンウィークは相模湖でバスフィッシングをしてきました。最近釣りに出かけることが増えているものの、ブラックバスはまだ釣ったことがなく、今回こそはと10時間以上ボートに乗りましたが、結局1匹も釣れず…。今年中には1匹は釣りたいものです。

さて、今回は代表取締役等住所非表示措置についてのお話です。

2024年4月26日に「商業登記規則等の一部を改正する省令(令和6年法務省令第28号)」が公布されました。この省令によると、2024年10月1日から、一定の場合には代表取締役の住所の一部を登記に表示しないこととすることができるようになります。概要については、「代表取締役等住所非表示措置について」(法務省)により確認することができます。

1.現行の制度における代表取締役の住所

現行の制度(2024年9月30日まで)においては、代表取締役の住所を非表示とすることはできず、基本的には全て登記する必要があり(会社法第911条第3項第14号)、転居した場合等、代表取締役の住所に変更があった場合には、変更から2週間以内に登記をする必要があります(会社法第915条第1項)。

実務上は、プライバシー等を懸念する方については、自宅マンションの部屋番号を省略して番地のみを記載することや、セカンドハウスを登記する方等もいるようです。しかし、部屋番号を省略したとしても建物を特定される問題は残り、また、費用の面等から登記のためにセカンドハウスを準備する方は限られていると考えられます。

2.新制度における代表取締役の住所

新制度(2024年10月1日から)においては、一定の場合には代表取締役の住所の一部を登記に表示しないようにすることができます。

具体的には、設立の登記や代表取締役の就任登記、住所移転登記など、代表取締役の住所が登記されることとなる登記の申請と同時にする場合に限り、市区町村や特別区までの表示とすることができます(例えば、「東京都港区」など)。

そのため、新制度がスタートしてから法務局に代表取締役の住所を非表示とすること自体を申し出ることはできず、代表取締役の登記手続を行う場合に合わせて住所を非表示とすることを申し出る必要があります。

3.代表取締役の住所を伏せることによる不都合

新制度により、代表取締役の住所の一部を登記に表示しないこととした場合、当然ではありますが、登記によって代表取締役の住所を証明することができなくなります。そのため、「代表取締役等住所非表示措置について」(法務省)においても「金融機関から融資を受けるに当たって不都合が生じたり、不動産取引等に当たって必要な書類(会社の印鑑証明書等)が増えたりするなど、一定の支障が生じることが想定されます」との指摘がなされています。新制度が施行された後、借入等により金融機関に登記簿謄本を提出することが想定される場合には、事前に金融機関とも調整し、代表取締役の住所の一部を登記に表示しない措置を行って問題がないか、他の資料を提出することで対応できるか、確認する必要があります。

4.まとめ

以上、代表取締役等住所非表示措置について簡単にまとめてみましたが、いかがでしたでしょうか。AZXでは代表取締役の登記を始めとした商業登記も取り扱っておりますので、不明点等あればお気軽にお問い合わせ下さい。

執筆者
AZX Professionals Group
弁護士 パートナー
貝原 怜太
Kaihara, Ryota
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