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起業家が最初にやるべき「創業株主間契約」とは?
【その2】退任後の株式処理や譲渡の対価を初心者向けに解説

2024/11/13

弁護士の貝原です!

前回に引き続き、創業株主間契約(創業メンバー株主間契約、創業者間契約)について解説したいと思います。

1.創業株主間契約の主な内容(その2)

前回の「起業家が最初にやるべき「創業株主間契約」とは?【その1】」の繰り返しとなりますが、創業株主間契約の主な内容としては、以下の内容が定められていることが多いです。

①退任した創業者が保有する会社の株式に関する株式譲渡請求権

②当該株式譲渡請求権への手続協力義務

③会社がM&A等により買収される場合に、退任した創業者に対して買収に応じるべきことを請求できる権利(強制売却権)

④株式の譲渡禁止等

特に、①退任した創業者が保有する会社の株式に関する株式譲渡請求権については、(a)請求権者をどのように定めるか、(b)株式譲渡請求権を行使することができる要件である退任をどのように定めるか、(c)株式譲渡請求権の対象となる株式をどのように定めるか、(d)株式譲渡請求権による株式譲渡の対価をどのように定めるかが重要です。

今回は、(c)株式譲渡請求権の対象となる株式をどのように定めるか、(d)株式譲渡請求権による株式譲渡の対価をどのように定めるかを中心に解説します。

((a)請求権者をどのように定めるか、(b)株式譲渡請求権を行使することができる要件である退任をどのように定めるかにつきましては、「起業家が最初にやるべき「創業株主間契約」とは?【その1】」をご覧下さい。)

(1)対象となる株式

創業者が退任した場合に株式譲渡請求権の対象となる株式の範囲については、①全部、②一部、③一定期間が経過した場合に、全部又は一部の株式を株式譲渡請求権の対象外(いわゆるリバース・べスティング)とすることが考えられます。

創業者が保有する会社の株式について、上場などExitするまで会社に所属することを前提として株式を取得しているにもかかわらず、当該創業者が途中で退任した場合には、株式譲渡請求権の対象となる株式を①全部と定めることが考えられます。他方、給与と同様に、会社に参画することそれ自体の対価として株式を取得している場合には、株式譲渡請求権の対象となる株式を②一部、又は③一定期間が経過した場合に、全部又は一部の株式が株式譲渡請求権の対象外になると定めることが考えられます。

(2)株式譲渡の対価

創業株主間契約に基づき会社に残る創業者が退任する創業者に対して株式譲渡請求権を行使した場合、その譲渡の価額をいくらとするかが問題となります。

一般的には、①取得価額(退任する創業者が会社の株式を取得した際の1株当たりの金額)、②無償、③時価のいずれかとすることが考えられます。

譲渡価額について、Exitに至るまで会社に貢献した場合に初めて利益を得られるものと考えた場合には、①取得価額や、②無償による譲渡価額の算定とすることが考えられます。他方、Exitに至る途中で退任した場合であっても退任時までの利益を得られるべきであると考えた場合には、③時価による譲渡価額の算定とします。なお、譲渡価額を①取得価額や、②無償とした場合、時価を下回る金額での株式譲渡となり、贈与税が課税される可能性があることから注意が必要です。

2.まとめ

以上、創業株主間契約(その2)につきまして、いかがでしたでしょうか。その1からの繰り返しとなりますが、まずは創業株主間契約を締結することとし、専門家にも相談の上、創業者間でその内容についてしっかりと検討することをおすすめします。

次回は②当該株式譲渡請求権への手続協力義務等について説明したいと思います。

AZXでは創業株主間契約についてのご相談を日常的に取り扱っておりますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。

創業株主間契約のより詳しい解説につきましては、拙著「創業者株主間契約」(菅原稔,他『スタートアップの法律相談』(青林書院、2023)8頁)をご参照ください。

執筆者
AZX Professionals Group
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貝原 怜太
Kaihara, Ryota
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