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ストックオプションプールとは?スタートアップが注目する新制度を解説

昨今のスタートアップについてのサポーティブな法改正の一環で、産業競争力強化法の改正により、いわゆるストックオプションプールの制度が利用できるようになりました。スタートアップ関係者の中で注目している方も多いと思われますので、今回はストックオプションプールについて解説します。[1]

なお、詳細については、拙稿「特別企画 産競法改正で要件緩和 ストックオプションプールの実務はどうなる」(中央経済社「旬刊経理情報」2024年11月20日号)もご参照下さい(宣伝です(笑))。

1.ストックオプションプールとは

一般的に「ストックオプションプール」と聞くと、株主間契約等で規定されるストックオプションの発行枠についての債権的な合意(≒契約上の合意)を想起する方が多いのではないでしょうか。少なくとも資金調達において株主間契約等の契約交渉に関わったことがある方は契約条項を想起されるものと思います。
今回、産業競争力強化法(以下「産競法」といいます。)の改正法が2024年9月2日に施行されたことによって利用可能となったストックオプションプールは、債権的な合意ではなく、会社法上の発行枠を柔軟化するものです。

2.ストックオプションプールの制度概要

会社法上、ストックオプションの発行は原則として株主総会決議が必要となるのですが、株主総会がストックオプションの大枠について決議すれば、その他の事項(会社法上「募集事項」といいます。)の決定を取締役会、取締役に委任することができ(このような株主総会の決議を以下「委任決議」といいます。)、この委任決議に従い、取締役(会)がその決議等によりストックオプションを発行することが可能となっています。
但し、現在の会社法では、委任決議に基づき取締役(会)の決議等でストックオプションを発行する場合でも、委任決議から1年以内をストックオプションの割当日としなければならないという制約があります。また、委任決議において行使価額等を決定しなければなりません。
今回の産競法の改正により、委任決議にかかる期間制限が会社設立後最大15年間と緩和され、また、行使価額等を委任決議により委任された取締役(会)で決めることができるようになりました。詳細な解説は割愛しますが、経済産業省公表資料の図表が分かり易いので、ご参照下さい。

【出典】経済産業省公表資料

3.要件と手続

次に、上記のストックオプションプールの制度を利用するための要件、手続について解説します。

まず、要件については、種々の条件が定められており一定複雑になっていますが、下表のとおり、経済産業法のウェブサイトにて要件がフローチャートの形で整理されていて分かり易いため、こちらをご参照下さい。詳細な説明は割愛しますが、一般論としては、IPO等のエグジットを目指し、VC等から資金調達しているスタートアップにとってはクリアすることが容易であると考えます。

【出典】経済産業省ウェブサイト

次に、手続については、経済産業大臣・法務大臣の両大臣の確認を得ることが必要となります。両省に確認申請を行うにあたっては、まずは事前相談を行うことが求められており、その上で正式な申請をすることとされています。そして、事前相談には少なくとも1カ月は必要とされていることからすると、最終的な両大臣の確認取得までは、2カ月程度は要すると考えておいた方がよいでしょう。

4.実務上の留意点

ここまで読んだ方はストックオプションプールが便利であり、利用してみたいと感じた方もいらっしゃるかと思いますが、実務上留意すべきポイントがありますので、以下記載します。

まず、上記3で述べた通り、経済産業大臣・法務大臣の両大臣の確認取得には一定の時間を要するという点です。したがって、急ぎでストックオプションプールを利用することを考えているケースでは利用するのは難しいでしょう。

次に、ストックオプションプール制度においては取締役(会)における募集事項の決定の権限が大きくなり、既存の株主や新たに株主・新株予約権者となろうとする者の権利・利益が害されるおそれがあることから、株主等を保護するための措置が義務付けられている点に注意する必要があります。具体的には、株主等になろうとする者に対して、委任決議の内容等を通知することなどとされています。

さらに、ストックオプションプール制度に基づき役員等にストックオプションを発行する場合でも、株主総会において報酬決議を行う必要がある点には注意した方がよいでしょう。すなわち、ストックオプションプールはあくまでストックオプション発行に関する決議に関する制度であるため、役員等にストックオプションを付与する場合において必要とされる報酬決議はカバーされておらず、この点を別途手当てする必要があることになります。

上記以外にも留意点はあるのですが、紙幅の関係で本ブログでは割愛します。詳細は拙稿をご参照頂くか、私(石田)までお問い合わせ頂けますと幸いです。

弊所ではストックオプションの発行、ストックオプションプールを含めたストックオプションのご相談を多く対応しておりますので、ご不明点があればお気兼ねなくご連絡下さい。

 

【脚注】

[1] ストックオプションプールは、非公開会社を念頭においた制度であるため、本ブログも非公開のスタートアップを前提としています。

[2] 会社法で言うところの「新株予約権」ですが、本ブログでは「ストックオプション」という表現で統一しています。

執筆者
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石田 学
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