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違法動画等にリンクを貼ると著作権侵害になる?ならない?

2013/08/09

img_up_htk-2はじめまして。AZXブログ初登場の濱本です。

個人のブログはもちろんのこと、ニュースサイト等においても、動画共有サイトの動画等にリンクを貼ることが日常的に行われています。

でも、よく考えてみると、このような一方的なリンクの貼り付けは、リンク先のコンテンツとの著作権との関係で問題を生じないのでしょうか。また、リンク先の動画がアニメやドラマ、映画等を無断アップロードしたような違法動画であったような場合でも問題はないのでしょうか。

この点について明確に述べた裁判例は従来ありませんでしたが、平成25年6月20日に大阪地方裁判所が初めて判断を示しました。実務上、参考になる点も多いため、今回はこの裁判例を紹介したいと思います。全文は、以下のURLから参照できます。

http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20130627134004.pdf

事案は、以下のようなものです。

<事案>

Xが自身が上半身裸でマクドナルドに入店する様子等を撮影してニコニコ生放送でライブ配信をしたところ、何者かがこのライブ配信を録画してニコニコ動画にアップロードした。さらに、ニュースサイトのロケットニュースがこの動画に関する記事を掲載するとともに、動画にリンクを貼った。Xがロケットニュースの運営会社であるYに対して、損害賠償等を求める訴訟を提起した。

<争点>

Xは、著作権侵害、著作者人格権侵害、名誉毀損、肖像権侵害を主張しましたが、裁判所は全ての主張を認めませんでした。著作権侵害との関係での主な争点は、以下の点です。

(i)動画にリンクを貼ったことが著作権侵害となるか

(ii)著作権者に無断でアップロードされた動画にリンクを貼ったことが、他者の著作権侵害を助ける(幇助)ものとして不法行為とならないか

(i)動画にリンクを貼ったことが著作権侵害となるか

他人のホームページ等にリンクを貼ることが著作権侵害とならないかについては従来から議論があります。そして、経済産業省の「電子商取引及び情報材取引等に関する準則」も述べるように、リンクを貼ったとしてもユーザーに対してデータを送信するのはあくまでリンク元であることから、一般的にリンクを貼る行為自体は著作権の侵害にならないと考えられています。

今回の事案において、Yは再生ボタンをクリックすることにより自分のウェブサイト上で動画を視聴できるいわゆる埋め込み型の方法によりリンクを貼り付けていました。そして、裁判所は、以下のように判断して、このような埋め込み型の場合も著作権侵害とはならないことを明確にしました。

Yは、「ニコニコ動画」にアップロードされていた本件動画の引用タグ又はURLを本件ウェブサイトの編集画面に入力することで、本件動画へのリンクを貼ったにとどまる。この場合、本件動画のデータは、本件ウェブサイトのサーバに保存されたわけではなく、本件ウェブサイトの閲覧者が、本件記事の上部にある動画再生ボタンをクリックした場合も、本件ウェブサイトのサーバを経ずに、「ニコニコ動画」のサーバから,直接閲覧者へ送信されたものといえる。すなわち、閲覧者の端末上では、リンク元である本件ウェブサイト上で本件動画を視聴できる状態に置かれていたとはいえ、本件動画のデータを端末に送信する主体はあくまで「ニコニコ動画」の管理者であり、Yがこれを送信していたわけではない。したがって、本件ウェブサイトを運営管理するYが、本件動画を「自動公衆送信」をした(法2条1項9号の4)、あるいはその準備段階の行為である「送信可能化」(法2条1項9号の5)をしたとは認められない。

(ii)他者の著作権侵害を助ける(幇助)ものとして不法行為とならないか

著作権者がアップロードした動画等にリンクを貼った場合には、著作権侵害になりません。では、著作権者に無断でアップロードされたような動画にリンクを貼ってしまった場合に、第三者の著作権侵害を助ける(幇助)ものとして、不法行為が成立してしまわないかというのが、次の問題です。

この点について、裁判所は以下のように述べています。今回の裁判例で、実務上最も参考になると思われる部分です。

「ニコニコ動画」にアップロードされていた本件動画は、著作権者の明示又は黙示の許諾なしにアップロードされていることが、その内容や体裁上明らかではない著作物であり、少なくとも、このような著作物にリンクを貼ることが直ちに違法になるとは言い難い。そして、Yは、前記判断の基礎となる事実記載のとおり、本件ウェブサイト上で本件動画を視聴可能としたことにつき、Xから抗議を受けた時点、すなわち、「ニコニコ動画」への本件動画のアップロードが著作権者であるXの許諾なしに行われたことを認識し得た時点で直ちに本件動画へのリンクを削除している。

このような事情に照らせば、Yが本件ウェブサイト上で本件動画へリンクを貼ったことは,Xの著作権を侵害するものとはいえないし、第三者による著作権侵害につき、これを違法に幇助したものでもなく、故意又は過失があったともいえないから、不法行為は成立しない

すなわち、無断でアップロードされていることが明らかではない著作物についてリンクを貼っても直ちに違法にはならず、著作権者から抗議を受ける等無断にアップロードされた著作物であることを認識できた時点でリンクを削除すれば不法行為は否定される、ということになります。

なお、リンクを貼っても直ちに違法にならないのは「著作権者の明示又は黙示の許諾なしにアップロードされていることが、その内容や体裁上明らかではない著作物」であるとされている点に注意が必要です。例えば、テレビ映像がYouTubeに無断でアップロードされている場合のように、その内容や体裁上からも無断でアップロードされていることが明らかな著作物にリンクを貼った場合には、不法行為の成立が認められる可能性も否定できないと考えます。

まとめ

今回の裁判例を踏まえると、例えば情報サイトにおいて他サイトの動画等にリンクを貼る場合には、事業者としては以下のような点に注意して運用をする必要があるといえそうです。

リンク先の動画等が無断アップロードされていることがその内容や体裁上明らかな著作物であるか否かを確認し、これに該当する場合にはリンクを貼ることはやめた方が安全である。

無断アップロードされていることがその内容や体裁上明らかではない動画等については、リンクを貼っても直ちに不法行為とはならない。この場合、いわゆる埋め込み型のリンクを貼ることも可能である。

著作権者から抗議を受ける等無断にアップロードされた著作物であることを認識できた時点で動画等のリンクは削除した方がよい。逆にいえば、この時点で削除すれば、不法行為は成立しない可能性が高い。

執筆者
AZX Professionals Group
弁護士 パートナー
濱本 健一
Hamamoto, Kenichi

今回は、比較的新しい裁判例の検討を通じて、実務上注意すべき点を紹介してみましたが、いかがでしたでしょうか。
法令には直接規定されないようなことでも、先例となる判例や裁判例が存在することがあります。法令上明確でないなと思ったら、判例や裁判例の有無を調査してみるのもよいかもしれません。

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