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フランチャイズ契約の留意点

2008/02/22

~ AZX Coffee Break Vol.8 〜

フランチャイズ契約は、フランチャイズに関するフランチャイザーとフランチャイジーの間の契約である。一般に「フランチャイズ」とは、フランチャイザーが自己の商標等及び経営のノウハウを用いて、同一のイメージのもとに事業を行う権利を与え、他方でフランチャイジーが一定の対価を支払い、フランチャイザーの指導および援助のもとに事業を行う継続的関係をいう。ベンチャー企業がフランチャイズ・システムにより事業を展開する例も多いため、今回は、自社がフランチャイザーとなりフランチャイズ契約を締結する際の留意点について、実務上問題になることが多いものを解説する。以下、フランチャイザーを「本部」、フランチャイジーを「加盟店」、フランチャイズ契約を「FC契約」という。

(1)FC契約に関する主たる法的規制  FC契約に関係する主たる法律としては、中小小売商業振興法と独占禁止法がある。中小小売商業振興法は、小売商業におけるフランチャイズ・システムについて、契約締結時における本部の加盟店に対する書面交付による説明義務を規定している。独占禁止法は、事業支配力の過度の集中を防止して、事業活動の不当な拘束を排除することを目的とする法律であるが、「フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方について」(平成14年4月24日公正取引委員会)により、不公正な取引方法として同法違反となる場合があることが示されているほか、本部の加盟店に対する情報開示についての考え方も示されている。その他業種によって各種業法の規制が及ぶこともある。FC契約の作成にあたっては、このような法的規制を理解し、法令上説明義務が課される事項を網羅すること、また内容面において法令に違反しないことが必要となる。

(2)説明義務  上記規制の他、一般に本部は加盟店に対し客観的かつ的確な情報を提供する義務を負うと解されており、本部がこれに違反して加盟店が損害を被った場合には損害賠償義務を負う可能性がある。そのため、FC契約の締結に際しては、FC契約に係る権利義務、FC契約締結の前提となる事実、加盟店のリスク等について正確かつ十分な情報を提供する必要がある。損益予想を提供する場合、基礎となる市場調査が不十分である、情報の評価や分析が不合理であるなどの事情があると、説明義務違反を問われる可能性がある。

(3)商標等の使用許諾  FC契約においては、本部が加盟店に対し、本部の商標、商号等の使用を許諾するのが通常である。その際には、使用を許諾する商標等を特定し、加盟店による商標等の使用方法等を指定できるように定めておく方がよい。また、商標等に関しては、第三者による本部の権利の侵害を発見した場合に本部に報告すること、本部の商標等に対する権利を争わないこと、契約終了後に商標等を撤去することなどを加盟店に義務づけておくことも考えられる。ただし、知的財産権の不争義務を加盟店に課すことについては場合により独占禁止法に抵触する可能性もあるので留意する必要がある。なお、本部が自己の商号の使用を加盟店に許諾すると、本部と誤認して加盟店と取引した他人に対して責任を負う可能性があるので(商法第14条、会社法第9条)、この点も留意が必要である。

(4)研修  加盟店の水準を確保しイメージを維持するために本部が研修を行うことがある。研修が十分であるか等について加盟店から争われる事案も見受けられ、紛争の予防のためにも、研修の内容、費用負担等について明確に定めておく必要がある。研修費用については、ロイヤルティや加盟金に含まれる場合や別途加盟店が支払う場合があり、これも明確にする必要がある。中小小売商業振興法により、研修又は講習会の開催の有無や内容など経営指導に関する事項について説明義務が課されており、この点からも明示が要求される。

(5)テリトリー  FC契約にはテリトリー条項が付されているものも多い。テリトリー内で加盟店に対して独占権を付与する場合、本部が当該テリトリーで他の加盟店と契約しないという趣旨か、本部自らの営業もできないという趣旨かを明確にしておく必要がある。逆に、テリトリーに関して加盟店に義務を負わせる場合、事業所の設置場所を制限する趣旨か、テリトリー外での営業活動を禁止する趣旨かなどを明確にする必要がある。なお、過度に厳格な制限を課すことにより独占禁止法上問題にならないよう留意する必要がある。

(6)ロイヤルティ  ロイヤルティについてはFC契約で様々な定め方が可能であり、定額とすることや、売上や利益に応じて変動させることなどがある。利益を基準とする場合、売上から控除できる費用を限定しておくことも考えられる。小売業等においては廃棄商品や棚卸ロスをロイヤルティ算定の基礎とするかを明確にしておく方がよい。売上や利益を算定の基礎とする場合には、加盟店から適切な報告がなされる必要があり、加盟店に対する監査や、虚偽報告に対するペナルティについて定めることも検討すべきである。

(7)加盟金  FC契約においては、フランチャイズ・システムへの加盟に際して加盟店から金銭を徴収することがある。加盟金に関しては、FC契約が有効期間の途中で終了した場合に、本部が加盟店に返還する義務を負うかが特に問題になる。そのため、加盟金の性質、返還の有無及び返還の条件等について、明確に定めておくべきである。また、契約更新の際に更新料等が生じるかも問題になるため、明確に定めておくべきである。

(8)違約金  FC契約において、加盟店の契約違反に備えて、違約金の定めをしておくことがある。違約金は賠償額の予定と推定される(民法第420条第3項)ため、単に違約金の定めをした場合、損害が高額であったとしても、違約金の額しか請求できなくなる可能性がある。そこで、本部が加盟店の契約違反により違約金を超える損害を被った場合には本部がその超過額を加盟店に対して請求することができる旨を明確に定めておく方がよい。ただし、違約金の額があまりに高額であったりすると、公序良俗に反するとして規定どおりの効果が認められない可能性もあるので、留意する必要がある。

(9)取引先の制限等  FC契約においては、加盟店による商品、原材料等の購入等について一定の義務を課すことも考えられる。これに関しては、例えば、商品、原材料等の注文先について、品質を維持するために必要不可欠であるなどの正当な理由なく、加盟店に対し本部や本部が指定する事業者とのみ取引させるようにすることは、拘束条件付取引、優越的地位の濫用などとして独占禁止法上問題になる可能性があり、留意が必要である。

(10)FC契約の終了  FC契約の終了時には、未払のロイヤルティや保証金など債権債務関係が残存することも想定されるため、精算方法を明確にしておく方がよい。また、FC契約終了後は、加盟店が本部の商標等や経営ノウハウを用いることを禁じるとともに、店舗の外観、内装等を加盟店の費用負担で変更することを義務づけることも考えられる。また、マニュアル等の貸与物の返還についても定めておく方がよい。

(11)競業禁止、秘密保持  本部が、特定の地域で成立している商権の維持や加盟店に対して供与したノウハウの保護を図ろうとする場合、FC契約において、加盟店に対し、契約終了後の競業禁止義務を課すことが考えられる。ただし、過度に広範な競業禁止義務を課した場合、公序良俗に反するとして無効とされる、優越的地位の濫用として独占禁止法上問題が生じるなどの可能性がある。そのため、競業禁止義務を課す範囲については、地域、期間、内容等について慎重に検討する必要がある。特に、本部の営業と関連のない業務についても競業禁止義務を課すことは、上記の問題が生じる可能性が高い。
本部の営業秘密については不正競争防止法等により一定の範囲で保護されるが、不十分である可能性もあるため、加盟店の秘密保持義務について、FC契約で定めておく方がよい。また契約終了後は秘密保持のみならず情報の使用自体も禁止するよう留意すべきである。

 

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