弁護士の横田です!
最近は、来年のAZXの新年会の実行委員となった関係で、新年会のコンセプトの検討や会場選定、企画などを他の実行委員会のメンバーと話し合ったりしていますが、検討過程でアイデア出しのためにChatGPTを使ったりもしています(何か面白いアイデアがあれば教えてください!)。先日ChatGPTの新モデル「GPT-4o」がリリースされ、音声・視覚情報等をより高速に処理できるようになったのを見て、AIの進化の速さに驚きました…!(なお、このブログはAIに頼っていません。)
弁護士の横田です!
最近は、来年のAZXの新年会の実行委員となった関係で、新年会のコンセプトの検討や会場選定、企画などを他の実行委員会のメンバーと話し合ったりしていますが、検討過程でアイデア出しのためにChatGPTを使ったりもしています(何か面白いアイデアがあれば教えてください!)。先日ChatGPTの新モデル「GPT-4o」がリリースされ、音声・視覚情報等をより高速に処理できるようになったのを見て、AIの進化の速さに驚きました…!(なお、このブログはAIに頼っていません。)
さて、今回はそんなAIに関して、最近行政から公表されたガイドライン等をご紹介させて頂きます。
2024年4月19日に、総務省及び経済産業省から、『AI事業者ガイドライン(第1.0版)』が公表されました[1]。
同ガイドラインは、AI の安全安心な活用が促進されるよう、AI ガバナンスの統一的な指針を示すことにより、AI を活用する事業者が、AI のリスクを正しく認識し、必要となる対策を自主的に実行できるように後押しすること等を目的として策定されています(同ガイドライン2頁参照)。
また、同ガイドラインは、「事業者が AI の社会実装及びガバナンスを共に実践するためのガイドライン(非拘束的なソフトロー)」として策定されているものとされているため、必ずしも法的な拘束力を持つものではないと考えます(同ガイドライン2頁~3頁参照)。加えて、同ガイドラインは、「予め事前に当該利用分野における利用形態に伴って生じうるリスクの大きさ(危害の大きさ及びその蓋然性)を把握したうえで、その対策の程度をリスクの大きさに対応させる『リスクベースアプローチ』」にもとづく企業における対策の方向を記載しているものとされています(同ガイドライン3頁)。
同ガイドラインは、適用対象となる事業者について、「AI 開発者」、「AI 提供者」及び「AI 利用者」の3つに大別し、各主体において必要な取組みについての基本的な考え方を示しています(他方で、AI 活用に伴い学習及び利用に用いるデータの提供者は同ガイドラインの適用対象とはならないとされています。同ガイドライン4頁参照)。上記3つの類型に該当する各事業者においては、AIの開発・提供・利用にあたって必要な対応を検討するにあたり、同ガイドラインが参考になると考えます。
同ガイドラインは「本編」と「別添」に分かれているところ、これらは以下のように位置付けられています。
・「本編」: どのような社会を目指すのか(基本理念=why)
どのような取組を行うか(指針=what)
・「別添」: どのようなアプローチで取り組むか(実践=how)
また、AI事業者ガイドラインの構成は、大要以下のとおりとなっています(同ガイドライン本編7頁参照)。
その他の「AI事業者ガイドライン」の概要については、「AI事業者ガイドライン(第1.0版)概要」をご参照ください。
なお、従前から経済産業省より公表されている「AI・データの利用に関する契約ガイドライン 1.1 版」(令和元年12月)においては、AI を利用したソフトウェアの開発・利用に関する契約やデータの提供/利用に関する契約、またこれらの契約の前提としてあらかじめ理解しておくべき事項等について、基本的な考え方が整理されていますが、AIの開発や利用に関する状況の目覚ましい進展により、当該「契約ガイドラインには、参照することが変わらず有益である内容と、公表後の状況の変化を考慮すべき内容とがあることに留意することが重要」とされています(AI事業者ガイドライン別添154頁参照)。
そのため、当該契約ガイドラインを参照する際は、AI事業者ガイドライン別添154頁以下の「6.『AI・データの利用に関する契約ガイドライン』を参照する際の主な留意事項について」も参照する方がよいと考えます。
2024年4月22日に、内閣府「AI時代の知的財産権検討会(第7回)」において、「AI 時代の知的財産権検討会中間とりまとめ(案)」が公表されました[2]。
当該中間とりまとめ案は、以下のようにAIに関係する知的財産権について横断的見地からの検討がなされており、「AI 開発者」、「AI 提供者」及び「AI 利用者」のいずれの立場においても参考になるものと考えます(以下は目次から抜粋しております)。
Ⅲ. 生成 AI と知財をめぐる懸念・リスクへの対応等について 1.法的ルール①(著作権法との関係) (1)著作権法制度の概要 (2)具体的な課題 (3)生成 AI に係る各段階における著作権法の適用 2.法的ルール②(著作権法以外の知的財産法との関係) (1)知的財産法制の概要 (2)具体的な課題 (3)生成 AI と意匠法(意匠権)との関係 (4)生成 AI と商標法(商標権)との関係 (5)生成 AI と不正競争防止法との関係 (5-1)商品等表示規制との関係 (5-2)商品形態模倣品提供規制との関係 (5-3)営業秘密・限定提供データとの関係 (6)生成 AI とその他の権利(肖像権・パブリシティ権)の関係 3.技術による対応 (1)具体的な課題 (2)考えられる技術例 (2-1)AI が生成したコンテンツを利用者が識別できる仕組み (2-2)フィルタリング (2-3)自動収集プログラム(クローラ)による収集を拒絶する技術 (2-4)画像に特殊な画像処理(学習を妨害するノイズ)を施すことで学習を妨げる技術 (2-5)学習元コンテンツの個別追跡・除外に関する技術 (3)技術による対応策の法的ルールによる担保について 4.契約による対応(対価還元) (1)具体的な課題 (2)契約による対価還元策の妥当性等 (3)考えられる方策例 (4)契約による対価還元策の担保について 5.個別課題 (1)労力・作風の保護 (2)声の保護 (3)学習用データセットとしてのデジタルアーカイブ整備 (4)ディープフェイクについての知的財産法の視点からの課題整理 6.横断的見地からの検討. (1)問題意識 (2)生成 AI と知的財産権との望ましい関係の在り方 (3)社会への発信等の在り方 Ⅳ.AI 技術の進展を踏まえた発明の保護の在り方について 1.AI を利用した発明の取扱いの在り方 (1)現状と課題 (2)考え方 2.AI の利活用拡大を見据えた進歩性等の特許審査実務上の課題 (1)現状と課題 (2)考え方 |
上記の検討会と並行して開催された文化審議会著作権分科会法制度小委員会においても、AIに関する著作権法の解釈にかかる各論点について検討が進められ、2024年3月15日に、同小委員会から「AI と著作権に関する考え方について」が公表されました。
上記の中間とりまとめ(案)16頁以下においても、当該「AI と著作権に関する考え方について」の記載が一部引用されてAIに関する著作権法の各論点について解説がされていますが、当該「AI と著作権に関する考え方について」では、AIと著作権に関する論点についてより詳細な解説がなされています。
また、文化庁著作権課が2024年1月23日から同年2月12日までの間に実施した「AIと著作権に関する考え方について(素案)」に関するパブリックコメントの結果が同年2月29日に公表されており、同パブリックコメントに係る各意見に対する事務局の考え方が示されています。
そのため、これらの資料も、今後AIに関する著作権法の解釈の参考になると考えます。
生成AIをはじめとするAIの進化は目覚ましく、法整備や解釈が固まっていない部分もありますが、上記のとおり、各事業者が取り組むべき指針や、知的財産権に関する一定の考え方が行政から示されたため、今後のAIの開発・提供・利用をするにあっては、これらの行政の資料等も踏まえて対応を検討する必要があると考えます。対応に迷われた際やご不明な点がある場合は、お気軽にお問い合わせ頂ければと存じます。
[1] 同ガイドラインは、従前、総務省主導で策定・公表されていた「国際的な議論のための AI 開発ガイドライン案」及び「AI 利活用ガイドライン~AI 利活用のためのプラクティカルリファレンス~」並びに経済産業省主導で策定・公表されていた「AI 原則実践のためのガバナンス・ガイドライン Ver. 1.1」を統合・見直しして策定されたものとされています(同ガイドライン2頁)。
[2] 現状は「案」の段階ですが、今後中間とりまとめとして正式決定されるものと考えます。