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投資契約でのリスク回避!表明保証条項のポイントと対策

2024/09/25

AZXの横田です。

今回は投資契約書のうち、表明保証条項について、解説いたします。

 1. 表明保証条項の意味と機能

表明保証条項とは、発行会社及び経営株主が、出資を受けるにあたり、投資家に対して、発行会社や経営株主に関する一定の事項(例えば、提出した登記簿謄本、定款、株主名簿、財務諸表等の書類が真実かつ正確であること、経営株主に兼任・兼職はないことなど)を投資家に対して表明し、保証する条項です。

 

投資家側から見たときの表明保証条項の機能としては、主に①DD(デュー・ディリジェンス)を補完する機能と、②ペナルティーを発動するための機能があります。

具体的には、まず、上記①については、投資家は本来的には発行会社に対してDDを行い重要な事項を調査しておくのが基本なのですが、スタートアップ投資の場合、時間と費用の観点から十分なDDを行えないケースも多いことから、この表明保証条項の各項目について発行会社及び経営株主に真実かつ正確であることを確認することによって、実質的にDDを補完することが可能な面があります。

また、上記②については、表明保証の内容が真実ではない場合に、投資家としては、発行会社や経営株主に対し、損害賠償請求を行うことや株式の買取請求を行って投資の撤退を図ることが可能になります。

 

スタートアップとしては、投資を受けた後に投資家から損害賠償請求や株式の買取請求をされる等、投資家との間でトラブルが発生しないようにする観点で、表明保証できない事項について、表明保証条項において明確に除外し、きちんと投資家に伝えておくことが大切になります。

 

 2. 例外事項への対応方法

表明保証条項の各項目を確認した結果、以下の2つに該当するものについては手当が必要です。

①異なる事実がある
(例:実は商標権を取得していない)

②自分では分からない
(例:「訴訟を提起されるおそれがない」か否かは、相手次第なので自分では分からない。)

「①異なる事実がある」ケースは、投資家にこのような事実がある旨を告げて、投資契約の表明保証条項に例外として明記してもらう必要があります。

例えば、上記の例では、「会社はその事業活動に必要な全ての知的財産権を保有している。但し、○○の商標については商標権を取得していない。」と記載することになります。

事実として商標権を取得していない以上、このような但書を記載せざるを得ず、投資家としては、このような但書がついても投資可能かどうかを判断することになります。

他に例外事項として検討することが多い項目としては、経営株主の兼任・兼職先や、登記申請中等で投資家に提出した登記簿謄本に反映されていないコーポレートアクション(株式発行やSO発行等)などがあります。

 

次に「②自分では分からない」ケースは、「○○のおそれがない」という形の規定や、自分以外の取引先、関連会社、株主、役職員の状況に関する規定などでよく生じることがあります。例えば、第三者から著作権侵害等を主張される「おそれがない」がないかといわれると、言いがかりもあるかもしれないから、保証は難しいというケースや、取引先が反社会的勢力ではないことを保証しろといわれても、自分としては反社会的勢力ではないと思っているから付き合っているが、調査会社を使って調べたものではないので、「保証」といわれると厳しいなどというケースです。

このような場合は「発行会社の知る限り」や「発行会社の知り得る限り」などの文言を追加して、自ら把握している範囲では正しいことを保証するという形に修正するのが一般的です。

なお、「知る限り」では、知らなければ免責されるのに対して、「知り得る限り」では、知らなかったとしても、知らなかったことについて調査不足などの落ち度があった場合には免責されないということになるため、スタートアップとしては、「知る限り」とする方が有利ですが、投資家から「知り得る限り」とすることを要求されることが多く、「知り得る限り」で妥結されることも多いです。

 3. まとめ

表明保証条項においては、表明保証の対象となる項目の数が多くなることがあり、全ての項目を確認することは大変ではありますが、後に投資家との間でトラブルとならないよう、例外事項として記載すべき事項がないか、「知る限り」などの限定をする必要がないか等を慎重に確認し、適切に投資家とコミュニケーションをとって投資を受けることが重要と考えます。

 

執筆者
AZX Professionals Group
弁護士 パートナー
横田 隼
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