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起業家が最初にやるべき「創業株主間契約」とは?
【その1】内容や締結時期を分かりやすく解説

2024/10/17

弁護士の貝原です!

創業初期のこれからビジネスが始まるワクワク感が好きなためか、毎週のように創業初期のご相談を頂いております。その中でもよくご相談頂くのが創業株主間契約です。

 

1.創業株主間契約、創業メンバー株主間契約、創業者間契約

創業株主間契約とは、スタートアップの創業者である会社の株主同士が締結する契約であり、一部の創業者が会社を退任した場合に、残る創業者に株式を譲渡することを主な内容として定めた契約のことをいいます。創業者株主間契約、創業メンバー株主間契約、創業者間契約と呼ぶこともあります。

弊所でも創業株主間契約のひな形を公開していることもあってか、創業株主間契約の存在自体はかなりメジャーになって来た印象があります。もっとも、創業初期にこれからビジネスが始まるという中で、いきなり会社を辞めるときのことを考えて創業株主間契約を締結するのは気が引けますよね…。そのためか、創業株主間契約を締結しようと思っていて先送りにしていたら創業者が退任してしまったというご相談や、締結はしていたものの十分な検討がなされておらず創業者の退任時にトラブルが生じているというご相談も珍しくありません。まずは創業したら創業株主間契約の締結を検討し、その際は専門家にもご相談することをおすすめします。

2.いつまでに締結すれば良いか

創業株主間契約は一部の創業者が会社を退任した場合に、残る創業者に株式を譲渡することを主な内容として定めた契約であるため、退任の話がないタイミング(=創業直後)に締結するのが良いと考えられます。また、設立後に創業メンバー等に対して株式譲渡を行う場合には、株式譲渡と同時に創業株主間契約を締結するのが良いと考えられます。

なお、エンジェル投資家やベンチャーキャピタル等から資金調達をする際には、創業株主間契約の締結を求められることも珍しくありません。そのため、資金調達の予定がある場合には、速やかに創業株主間契約を締結するのが良いと考えられます。

3.創業株主間契約の主な内容(その1)

創業株主間契約の主な内容としては、以下の内容が定められていることが多いです。

①退任した創業者が保有する会社の株式に関する株式譲渡請求権

②当該株式譲渡請求権への手続協力義務

③会社がM&A等により買収される場合に、他の創業者に対して買収に応じるべきことを請求できる権利(強制売却権)

④株式の譲渡禁止等

特に、①退任した創業者が保有する会社の株式に関する株式譲渡請求権については、(a)請求権者をどのように定めるか、(b)株式譲渡請求権を行使することができる要件である退任をどのように定めるか、(c)株式譲渡請求権の対象となる株式をどのように定めるか、(d)株式譲渡請求権による株式譲渡の対価をどのように定めるかが重要です。

(1)請求権者

退任した創業者が保有する会社の株式に関する株式譲渡請求権について、2名の創業者により締結する創業者株主間契約であれば、会社に残る創業者にのみ株式譲渡請求権を認める内容とします。ただし、創業者(代表者)と従業員との間で締結する創業者株主間契約の場合には、従業員が退職した場合に創業者(代表者)にのみ株式譲渡請求権を定める内容とすることが一般的です。

(2)退任

株式譲渡請求権の要件となる「退任」をどのように定めるかについては、①役員を退任した場合、②役員及び従業員のいずれの地位も喪失した場合とすることが考えられます。また、会社の役員及び従業員ではなくなった後、会社との間で顧問契約や業務委託契約等の継続的な契約を締結し、③当該契約が終了した場合に初めて「退任」として扱うことも考えられます。

4.まとめ

以上、創業株主間契約(その1)につきまして、いかがでしたでしょうか。まずは創業株主間契約を締結することとし、専門家にも相談の上、創業者間でその内容についてしっかりと検討することをおすすめします。次回は(c)株式譲渡請求権の対象となる株式をどのように定めるか、(d)株式譲渡請求権による株式譲渡の対価をどのように定めるかについて説明したいと思います。

AZXでは創業株主間契約についてのご相談を日常的に取り扱っておりますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。

創業株主間契約のより詳しい解説につきましては、拙著「創業者株主間契約」(菅原稔,他『スタートアップの法律相談』(青林書院、2023)8頁)をご参照ください。

執筆者
AZX Professionals Group
弁護士 パートナー
貝原 怜太
Kaihara, Ryota
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