弁護士の貝原です!
前回に引き続き、創業株主間契約(創業メンバー株主間契約、創業者間契約)について解説したいと思います。
目次
1.創業株主間契約の主な内容(その3)
前回の「起業家が最初にやるべき「創業株主間契約」とは?【その2】」の繰り返しとなりますが、創業株主間契約の主な内容としては、以下の内容が定められていることが多いです。
①退任した創業者が保有する会社の株式に関する株式譲渡請求権
②当該株式譲渡請求権への手続協力義務
③会社がM&A等により買収される場合に、他の創業者に対して買収に応じるべきことを請求できる権利(強制売却権)
④株式の譲渡禁止等
今回は、②当該株式譲渡請求権への手続協力義務、③会社がM&A等により買収される場合に、他の創業者に対して買収に応じるべきことを請求できる権利(強制売却権)を中心に解説します。
(①他の創業者が保有する会社の株式に関する株式譲渡請求権につきましては、「起業家が最初にやるべき「創業株主間契約」とは?【その1】」及び「起業家が最初にやるべき「創業株主間契約」とは?【その2】」をご覧下さい。)
(1)株式譲渡請求権への手続協力義務
創業株主間契約に従って創業者が他の創業者に対して株式の譲渡を求めた場合であっても、別途会社法に従った手続が必要となり、具体的には、①譲渡承認請求(会社法第136条以下)と、②株主名簿名義書換請求(会社法第133条)が必要となります。そのため、創業株主間契約においては、会社法に従った株式譲渡の手続にも協力する義務があることを明記しておいた方が良いと考えられます。
(2)会社がM&A等により買収される場合に、他の創業者に対して買収に応じるべきことを請求できる権利(強制売却権)
ある創業者が株式を保有したまま退任した後、会社のM&Aが決まり全ての株式を譲渡しようとしたところ、当該創業者から協力を得られず、M&Aが破談となってしまうこともあるかもしれません。このような場合に備えて、創業株主間契約においても、会社がM&A等により買収される場合に、他の創業者に対して買収に応じるべきことを請求できる権利(強制売却権、ドラッグアロングライト)を定めることがあります。
創業株主間契約の内容として、退任時に保有する全部の株式を残る創業者に取得価額で譲渡する旨が定められていれば上記のような強制売却権(ドラッグアロングライト)を定める必要はありませんが、リバースベスティングを定めている場合等、一定の場合に他の創業者が株式を保有し続ける内容となっているのであれば、強制売却権(ドラッグアロングライト)を定めることの検討が必要です。
2.まとめ
以上、創業株主間契約(その3)につきまして、いかがでしたでしょうか。その1及びその2からの繰り返しとなりますが、まずは創業株主間契約を締結することとし、専門家にも相談の上、創業者間でその内容についてしっかりと検討することをおすすめします。
AZXでは創業株主間契約についてのご相談を日常的に取り扱っておりますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。
創業株主間契約のより詳しい解説につきましては、拙著「創業者株主間契約」(菅原稔,他『スタートアップの法律相談』(青林書院、2023)8頁)をご参照ください。