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競業避止義務を定める際の注意点【その2】禁止行為の範囲・期間・地域的限定を解説

2025/03/24

弁護士の貝原です!

エンターテインメント業界や美容業界など、一定の業界でよく見かける競業避止義務ですが、前回の「競業避止義務を定める際の注意点【その1】有効と判断されるためのポイント」に続き、今回は競業避止義務の具体的な内容について解説したいと思います。

1.競業避止義務の具体的な内容

競業避止義務とは、契約の一方当事者が他方当事者の事業と競合する事業に従事してはならない義務をいいます。例えば、エンターテインメント業界であれば、タレントや演者が芸能事務所の事業と競合する事業(一定の芸能活動)に従事してはならない義務として定められることがあります。具体的な内容としては、以下が考えられます。

(1)禁止行為の範囲

競業避止義務において定められる禁止行為の範囲として、「会社(事務所)の事業と競合する事業」と広範に定めるケースもあります。

より限定するケースとして、エンターテインメント業界の契約内容であれば、「YouTubeのチャンネル運営事業」等、媒体や事業内容を具体的に特定することもあります。

また、美容業界であれば、「担当した顧客」等、取引の相手方を限定するケースもあります。

 

禁止行為の範囲については、「業界事情にもよるが、競業企業への転職を一般的・抽象的に禁止するだけでは合理性が認められないことが多い」、「業務内容や職種等について限定をした規定については、肯定的に捉えられている」(「競業避止義務契約の有効性について」(経済産業省)14頁)との整理がなされていることから、あまり広範に定めてしまうと有効性が認められる可能性が低下するため、注意が必要です。

会社や事務所としては、禁止行為の範囲をある程度広範に定めておきたい場合もありますが、有効性を考慮し、特に必要な点が保護されるよう内容を限定し、有効かつ実効性のある内容とすることが重要です。

(2)期間

競業避止義務を定める期間として、会社(事務所)との契約期間中はもちろんのこと、契約終了後も一定期間は一定の事業を禁止する旨を定めるケースもあります。

契約終了後における競業避止義務の期間については、「1年以内の期間については肯定的に捉えられている例が多い」、「近年は、2年の競業避止義務期間について否定的に捉えている判例が見られる」(「競業避止義務契約の有効性について」(経済産業省)12頁)との整理がなされているところ、この整理に従えば1年程度に留めておく方が安全です。もっとも、より長期の期間を定めた場合であっても、禁止行為の範囲が限定的である等、他の事情を踏まえて有効と判断される可能性もあります。

会社や事務所としては、自社として必要と考える競業避止義務の期間を設定しつつ、有効性に疑義がある場合には、禁止行為の範囲を限定する等して、有効性に配慮することが考えられます。

(3)地域的限定

競業避止義務を定める地域として、例えば実店舗を運営するビジネスであれば、店舗と同じ商圏に限定するケース、店舗からの一定距離に限定するケースがあります。

競業避止義務の地域的限定について、「地域的限定については、使用者の事業内容や、職業選択の自由に対する制約の程度、特に禁止行為の範囲との関係を意識した判例が見られる」、「地理的な制限がないことのみをもって競業避止義務契約の有効性が否定されている訳ではない」(「競業避止義務契約の有効性について」(経済産業省)11頁)との整理がなされています。そのため、地域的限定を定めるとともに、禁止行為の範囲も合わせて実効性のある内容となるよう検討が必要です。なお、エンターテインメント業界での契約に競業避止義務が定められている場合でも、芸能活動等の性質上、地域的限定になじまないことから、このような限定がなされないことが多いです。

2.まとめ

以上、競業避止義務を定める際の注意点【その2】につきまして、いかがでしたでしょうか。競業避止義務はタレントや演者に対する制約が強い内容であるだけに、有効性が問題となることも珍しくありません。スタートアップとしては、自社の契約における競業避止義務が、有効かつ適法で実効性のある内容となるよう慎重な検討が必要です。

AZXでは競業避止義務を含む契約(マネジメント契約等)についてのご相談を日常的に取り扱っておりますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。

次回は競業避止義務の実効性を高める他の規定(違約金、芸名、SNSに関する規定等)について解説したいと思います。

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執筆者
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貝原 怜太
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