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サイト運営のリスクヘッジはどうする?(食べログ訴訟を題材に)

AZXでは、新しいビジネスを始めようとしている皆さんのために、「ビジネスモデル無料審査」というサービスを提供しています。ビジネスモデル無料審査は、昨年から始まったまだ新しいサービスですが、既に数十件の審査を行っており、私はそのほとんどに関与してきています。

相談件数も徐々に増えてきています。

そこで、私の担当回では、主にビジネスモデルの適法性にまつわるトピックを取り上げていきます。

今回は、「ネット選挙のビジネスチャンス!」というテーマを予定していましたが、ホットトピックである「食べログ訴訟」の件を取り上げることに致しました(前回予告した「ネット選挙のビジネスチャンス!」は次回に変更させていただきました。)今回は、サイト運営上のリスクヘッジをどうやってやるかという観点からの記事となります。

 

食べログ訴訟の概要

報道によれば、食べログに「出てくるのがおそい」「まずい」などと書かれた店が、お客さんが激減したとして、サイトを運営しているカカクコムさんに対して、情報の削除と損害賠償を求めて札幌地裁に提訴したとのこと。

 

食べログ訴訟の論点

今回の訴訟でのポイントは、

そもそも書き込みについて名誉毀損等の不法行為になるか?

書き込みについて不法行為になるとしても、書き込みを行ったわけではないカカクコムさんが責任を負うことはあり得るのか?

という2点です。

今回は、サイト運営のリスクヘッジについて解説したいため、①の論点ではなく、②の論点について解説させていただきたいと思います。

 

口コミサイト管理者も責任を負う?

②については、カカクコムさんはサイトを運営しているに過ぎないので、仮に①で書き込みが不法行為になるとしても、カカクコムさんには関係がないように思われるかもしれません。ですが、裁判例では、一定の場合にはユーザーの書き込みを削除しなかったことがサイト運営者の不法行為となるものとされています。どのような場合に不法行為になるかについては明確な基準はありませんが、権利侵害の書き込みを知っていたにもかかわらず敢えて放置したような場合や、一般通念上権利侵害の書き込みに気が付くべきであったと考えられるような場合には、サイト運営者の不法行為になる可能性が高いでしょう。

 

サイト運営者としては、

(i)権利侵害を把握するための適切な措置(通報フォームを設置する、パトロールを行うなど)をとっておく

(ii)名誉毀損のような他者の権利を侵害する書き込みがあった場合には、速やかに削除する

などの対策をすることで、自らのリスクをヘッジしていくことになります(後述のプロバイダ責任制限法第3条第1項参照)。

 

一方、書き込みの削除については、書き込みを削除することで、書き込みをした人に対する権利侵害だと判断されるリスクがあります。この点に関係する法律として、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(長いので、「プロバイダ責任制限法」と略されることが多いです)があります。プロバイダ責任制限法第3条第2項には一定の場合には書き込みを削除するような行為についてサイト運営者が責任を負わないとする内容が定められていますが、通常は、利用規約において、禁止事項を明確に定めた上で、サイト運営者が書き込みを削除できる旨やかかる削除について一切の責任を負わない旨を定めておくことで、プロバイダ責任制限法の要件を満たさなくとも削除できるようにしておきます。

 

以上をまとめると、サイト運営者のリスクヘッジの手段としては、

(i)利用規約において、削除及び削除についての免責規定を定めておく

(ii)権利侵害となる書き込みを発見するための体制を整えておく

(iii)権利侵害となる書き込みを見つけた場合には速やかに削除する

といったことが考えられます。この他にも、書き込みに不適切なワードがあった場合には自動的に通告がなされる仕組みを整備することや、同一人物が権利侵害の書き込みを繰り返すような場合のために、ユーザーの登録取消に関する規定を定めておき、悪質な場合には登録を取り消すことも考えられます。ユーザーが情報を投稿できるビジネスモデルのIPO審査では、このような対策がとられているかが問われます。

 

権利侵害の書き込みか微妙な場合の対処法

それでは、権利侵害となるか微妙な場合にはどのように対応すべきでしょうか?法務リスクという観点からは、迷ったら削除する方が安全です。なぜなら、上記(i)の利用規約の規定を定めておけば、書き込みが権利侵害でなかったとしても、免責を受けることができる可能性が高いからです。また、現実問題として、書き込みを削除されたからといって裁判を起こす人はほとんどいないのではないでしょうか。

 

しかし、サイト運営者としてはコンテンツを充実させるという観点からはできる限り削除を行うことは避けたいところです。ですので、例えば、食べログさんのようなグルメサイト運営者としては、評価対象の評価を著しく下げるような断定的な表現ではなく、具体的な情報を書き込むことを推奨することが考えられます。食べログさんの「口コミガイド(注意事項)」でも、「実際にお食事された内容を具体的に記述してください。」「個人への誹謗中傷、店舗への断定的批判は禁止します。」などの注意が記載されており、また、NGな書き込みの例も記載されているようです。やはり、サイト運営を適法に行うには、ユーザーへの啓蒙活動も重要だと考えられます。まあ、中々思う通りにはいかないでしょうが、地道に対応を継続することが大切です。

今回の内容は以上ですが、もし新しいビジネスを始めようとしていて、ビジネスモデルの適法性が気になっている場合には、気軽にビジネスモデル無料審査に申込んでみて下さい!


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