ナレッジ

組織再編手続においては債権者保護手続が必要とされており、原則として「知れたる債権者」への個別催告が必要となっています。この場合の「知れたる債権者」とは具体的にどの範囲を指すのか。金額が少ない債権者は省略してもよいのでしょうか。

個別催告の対象となる債権者については、金額的に重要か否かは特に問われていませんので、条文上は少額の債権者に対しても個別催告が必要であると考えられます。しかしながら、日常生活によって生ずるような軽微なものであれば、ことさらに知れたる債権者ということで各別に催告する必要はないと考える見解もあります。
また、どの時点の債権者に対し個別催告書を送付するべきかについては、まずは個別催告書発送時の債権者に対して送付する必要があると考えますが、その後債権者となるような将来債権の債権者に対しても個別催告書を発送するべきかについては、見解が分かれています。大審院昭和10年2月1日判決は、知れたる債権者とは、債権者が何人であるか、また、その債権はいかなる原因に基づくいかなる請求権であるかの大体が会社に知れている者であって、金銭債権者のごとく、原因及び数額の確知された債権を有する者に限られない旨判示し、継続的供給契約上の将来の債権の債権者も対象となる旨述べていますが、将来の労働契約上の債権、継続的供給契約上の将来の債権等の債権者は対象とならないとする見解もあります。催告をしなかった債権者から異議等があった場合に弁済や担保提供を行うことで処理するという対応も考えられますが、債権者異議手続の懈怠を理由に組織再編行為の無効等を主張してきたような場合には、簡単に解決できなくなる可能性もあります。催告する債権者の範囲を限定すると、このようなリスクが生じる可能性があることも考慮のうえで、判断した方が良いと考えられます。
関連するサービス