(1)株式会社の設立手続の概要説明書
(1)株式会社の設立手続の概要説明書
株式会社の設立手続の概要説明書
※ 本雛型は簡易版であり、あらゆるケースに対応したものではありません。ご利用にあたっては、適宜専門家にご相談頂くようお願いいたします。
株式会社の設立手続は、誰が出資するのか、何を出資するのか、いくら出資するのか、役員はどうするのかなど前提条件によって異なりますが、ベンチャー起業時には資金も人材も十分でなく、小規模の会社を設立するのが通常と思われます。ここでは、小規模会社の典型例である2パターンの会社(『取締役会あり』 と、『取締役会なし』)を設立するのに、できるだけ手続及び必要書類がシンプルとなるような発起設立の手続をご紹介します。なお、説明が多すぎると会社法に不慣れな方をかえって混乱させてしまいますので、各手続における法的な説明は割愛して、実務上気を付けるべき点を中心にまとめています。
※発起設立 設立時の出資金の全てを発起人が支払う設立手続です。
※発起人 会社設立を企画し、設立に関する義務と権利を有する者であって、定款に発起人として記載される者です。なお、発起人は必ず1株以上は出資しなければなりません。
※定款 会社の組織・運営・管理について定めた基本原則のことです。
■1. 事前準備 会社を設立する前提として、事前に以下のものをご準備下さい。
会社を設立する前提として、事前に以下のものをご準備下さい。
<取締役会ありの会社を設立する場合>
準備するもの |
備 考 |
発起人となる方の印鑑
|
市区町村に登録している実印
|
発起人となる方の印鑑証明書
|
定款認証前3ヶ月以内に取得したもの
|
代表取締役となる方の印鑑
|
市区町村に登録している実印
|
代表取締役となる方の印鑑証明書
|
登記申請前3ヶ月以内に取得したもの。
|
|
取締役の就任承諾書に記載された氏名及び住所と同一の氏名及び住所が確認できる以下の証明書を準備する必要があります。
(住基カード及び運転免許証については裏面もコピーし、本人が「原本と相違がない。」と記載して、記名押印する必要があります。) |
監査役となる方の本人確認証明書 |
同上。 |
新会社の会社代表印
|
必須ではないので、とりあえず代表取締役の印鑑を会社代表印としておき、会社設立後に変更することも可能です。
|
定款認証の手数料
|
公証役場への手数料と定款に貼付する印紙代を合計すると、約10万円となります。
|
設立登記の登録免許税
|
新会社の資本金の額×0.007で計算します。
|
<取締役会なしの会社を設立する場合>
準備するもの |
備考 |
発起人となる方の印鑑 |
市区町村に登録している実印 |
発起人となる方の印鑑証明書 |
定款認証前3ヶ月以内に取得したもの |
取締役となる方の印鑑 |
市区町村に登録している実印 |
取締役となる方の印鑑証明書 |
登記申請前3ヶ月以内に取得したもの。
|
新会社の会社代表印 |
必須ではないので、とりあえず代表取締役の印鑑を会社代表印としておき、会社設立後に変更することも可能です。
|
定款認証の手数料 |
公証役場への手数料と定款に貼付する印紙代を合計すると、約10万円となります。 |
設立登記の登録免許税 |
新会社の資本金の額×0.007で計算します。
|
※ 登記・・・・・・・・商号や本店所在地など、会社に関する所定の事項を公示するため、管轄の法務局が作成する登記簿に反映させることです。
■2. 設立手続の概要と必要書類
発起人が1名の場合の、会社設立までの大まかな流れと、各手続に必要な書類は以下のとおりです。番号を付している書類については、当事務所ホームページにて雛型(PDF)を掲載しておりますので、そちらをご参照の上、適宜ご作成下さい。
なお、(7)は設立手続とは直接関係しません(設立登記にも使いません)が、定款に社長の存在を前提とした規定があるため、設立後に取締役会を開催して選定することを想定しています。適宜ご利用下さい。
(1)~(5)までは通常1週間から半月程度かかることが予想されますが、最短で同日とすることも可能です。
取締役会なし
|
取締役会あり
|
|
(1)定款作成 |
発起人決定書①
|
発起人決定書②
|
(2)定款認証
|
印鑑証明書(発起人)
|
印鑑証明書(発起人)
|
(3)出資金の払込み
|
預金通帳の写し
|
預金通帳の写し
|
(4)出資の調査等
|
就任承諾書(取締役兼代表取締役)⑤
|
就任承諾書(取締役)⑥
調査報告書⑪ |
(5)登記申請
|
印鑑証明書(代表取締役)
|
印鑑証明書(代表取締役)
|
(6)登記完了
|
印鑑カード交付申請書⑰
|
印鑑カード交付申請書⑰
|
(7)社長の選定
|
-
|
取締役会議事録⑱
|
<サンプル>
以下の前提で、当事務所雛型を用いて平成27年にコンピューター・ソフトウェア開発の会社を設立する場合の作成例として、「設立書類サンプル」(PDF)を当事務所ホームページに掲載しておりますので、適宜ご参照下さい。
・ 発起人は、山田太郎(住所は、東京都中央区銀座1丁目2番3号 銀座ビル405号室)のみ。
・ 100株×1万円で100万円出資。
・ 取締役は、鈴木一郎(住所は、東京都港区六本木5丁目4番3号 六本木ビル201号室)のみ。
・ 取締役の住所(但し、ビル名は省略する。)を会社の本店所在地とする。
・ 事業年度は4月1日~翌年3月31日。
・ 6月14日を定款作成日、6月20日を定款認証日、6月24日を出資履行日、6月30日を調査報告日、7月1日を設立日とする。
※ 一人会社の場合には、発起人と取締役は同一人物となるのが通常ですが、サンプルではあえて別人にしています。同一人物とされる場合には、取締役を山田太郎に置き換えてご参照下さい。
■3. 各手続における補足・留意事項
(1) 定款作成について
・ 定款の規定全部について説明はしませんが、特に注意が必要と思われる点は脚注に記載していますので、必ずご一読下さい。
・ 定款が一通り完成したら、定款認証してもらう公証役場に事前にFAX等で送って内容を確認してもらいましょう。明らかな間違いなどは指摘してもらえますので、公証役場をうまく使うのがコツです。
・ 公証役場は、会社の本店所在地の法務局管内の公証役場であればどこでもOKです。最寄りの公証役場がどこにあるかは、法務局のホームページなどで確認できます。
・ 定款について公証役場の事前確認も済んだら、同じものを3部製本して発起人全員で押印します。公証役場へは、3部全部を持っていくこととなります。
・ 製本方法は、左端を2~3ヶ所ホチキス止めして、発起人全員が全ページに割印すればOKです。なお、市販の製本テープを利用して製本した場合など、全ページに割印しなくても足りる場合がありますが、ここでは詳細は割愛します。
メモ
定款認証の方法には、(i)紙に印刷・押印した定款を作成して公証役場へ提出する方法と、(ii)法務省の専用サイトを経由して定款の電子データを公証役場へ提出する方法があります。(ii)の方法は、定款に貼付する印紙代(4万円)が不要になるというメリットがあるものの、発起人全員の電子署名の取得などの事前準備が必要となり、かえって費用や手間がかかる可能性がありますので、ここでは(i)の方法による前提でご説明しています。
(2) 定款認証について
・ 定款の製本作業が終わり、その他の必要書類も準備できたら、実際に公証役場へ行く日時について事前に公証役場と打ち合わせしておきましょう。
・ 定款には収入印紙(4万円)を貼付して消印をする必要がありますが、もしも間違いがあると印紙が無駄になってしまいますので、収入印紙は貼らずに公証役場に持って行き、公証役場の指示に従ってその場で消印等を行うのが無難です。なお、消印の印鑑に制限はありませんので、認印でも構いません。
・ 公証役場によっては本人確認用の資料を求められる場合がありますので、詳細は公証役場にご確認下さい。
(3) 出資金の払込みについて
・ (2)の定款認証が終わったら、所定の口座(発起人決定書で定めた口座)へ出資金を払い込みます。預金通帳には振込みがなされたことが記帳される必要がありますので、残高が出資金額以上ある場合でも、一旦引き出して、振り込む必要があります。なお、振込手数料が引かれて出資金額を下回ることがないようお気を付け下さい。
・ 出資金額のうち2分の1までは資本金としないことも可能ですが、雛型及びサンプルでは、会社法の原則どおり出資金額の全額を資本金とする前提としています。
(4) 出資の調査等について
・ 定款で選任された取締役等が就任した後、取締役会ありの会社では代表取締役を選んでから、発起人の払い込んだ出資金について調査します。なお、取締役1名の会社は、その取締役が代表取締役となりますので、代表取締役を選ぶ手続は不要となります。
(5) 登記申請について
・ (4)の出資の調査が終わったら2週間以内に登記申請をします。
・ 会社の設立日は登記申請した日となりますので、土日祝日など法務局が開いていない日は設立日とすることができません。大安に設立したい!など、設立日にこだわりたい方はご注意下さい。
・ 法務局には、以下の3つを提出します。
(i) 登記申請書 + 収入印紙貼付用台紙(白紙のA4用紙に収入印紙(登録免許税の金額分)を貼付したもの) + 添付書類(登記申請書の記載をご参照下さい。)の順番でホチキス止めしたもの
(ii) 印鑑届出書
(iii) 登記申請書別添CD-R ・ 登記申請書と収入印紙貼付用台紙の全ページに割印します。なお、収入印紙には消印してはいけません。
・ 法務局に提出した添付書類は原則として返ってきませんので、登記用原本を別に作成して提出するか、「原本還付」というコピーを添付する方法で申請すると良いでしょう。
・ 法務局には無料の相談窓口がありますので、原本還付の方法など、申請手続に関する不明点は事前に管轄法務局に確認しましょう。法務局をうまく使うのがコツです。
(6) 登記完了について
・ 法務局の混雑状況にもよりますが、通常は登記申請してから1週間程度で登記は完了します。完了予定日は登記申請時に窓口で教えてもらえます。
・ 登記が完了したら申請した法務局に行って、まずは印鑑カードを作りましょう。印鑑カードは、会社の印鑑証明書を取得するために必要で、印鑑カード交付申請書を提出すれば無料で作れます。
・ 次に、法務局に備え付けの用紙に必要事項を記載して、所定の手数料を支払い、履歴事項全部証明書(俗に登記簿謄本と呼ばれるもの)と印鑑証明書を取得します。
・ 証明書を取得したら、登記申請した内容と間違いないか確認しましょう。何か間違いがあった場合には、法務局に相談して下さい。特に問題なければ無事に設立手続終了となります。
|