新株発行の手続について

書式/雛型 - 新株発行

新株発行の手続について

 

新株発行の手続について

 

※本雛型は簡易版であり、あらゆるケースに対応したものではありません。ご利用にあたっては、適宜専門家にご相談頂くようお願いいたします。

 

株式会社が資金調達を行うには様々な方法がありますが、ここでは非公開会社が新たに株式を発行することによって資金調達を行う場合の手続についてご紹介します。税務・会計に関する手続等については省略しています。また、取締役会設置会社であることを前提にご説明します。

※非公開会社…発行する株式の全部に、譲渡による取得について会社の承認を要する旨(=株式の譲渡制限)が定款に規定されている会社をいいます。証券市場へ株式公開していない会社(いわゆる非上場会社)とは概念が異なります。

 

■1.手続の流れ(第三者割当増資の場合)
募集株式を誰にどのように割り当てるかによって手続が異なりますが、ここではいわゆる「第三者割当増資」(=既存株主に対して持株比率に応じて割り当てる、いわゆる「株主割当増資」以外の方法)についてご紹介します。この場合の手続の原則的な流れは概ね以下のとおりとなります。
なお、割当てを受ける者との間で、募集株式の総数の引受けを行う契約(=総数引受契約)を締結する場合には、以下のとおり手続の一部が不要となります。

 















原則方式
総数引受方式
 募集事項の決定
 (株主総会/取締役会)

 募集事項及び割当ての決定
 (株主総会/取締役会)

 申込予定者へ募集事項等の通知

 申込予定者へ募集事項等の通知
 申込み

 割当ての決定 (取締役会)

 割当先へ割当事項の通知

 払込み

 払込み

 登記申請

 登記申請


※ 募集株式······· 会社法においては、新たに発行する株式を「募集株式」といいます。
※ 募集事項·······募集株式を発行する際に定める所定の発行条件を意味します。

 

■2.具体的な手続と必要書類(総数引受方式の場合)
小規模会社においては、誰に何株割り当てるかという点を含めて発行条件が決定される例が多いことから、ここでは取締役会設置会社が、原則方式に比べて少ない手続で足りる総数引受方式にて募集株式の発行を行う場合の必要書類等をご紹介します。

具体的な手続及び必要書類は以下のとおりであり、この場合の各書類の作成例(PDF)を当事務所ホームページにて掲載しておりますので、そちらをご参照の上、適宜ご作成下さい。

 

手続
必要書類
(1) 取締役会
取締役会議事録
 議案1:募集株式の発行
 議案2:定款変更
 議案3:募集株式の発行(枠)
 議案4:株主総会の招集
(2) 株主総会の招集通知発送
株主総会招集通知、委任状
(3) 株主総会
株主総会議事録
 議案1:定款変更
 議案2:募集株式の発行(枠)
(4) 総数引受契約書の締結
総数引受契約書
(5) 出資金の払込み
 
(6) 払込期日
  (=募集株式発行の効力発生日)
払込証明書
資本金の額の計上に関する証明書
(7) 登記申請
株主リスト
登記申請書

 


※ (1)~(3)が募集事項及び割当ての決定に関する手続となります。
※ 全ての手続完了まで通常は10日程度かかることが予想されますが、株主全員から同意を得ることができれば、株主総会の招集期間を短縮する等の方法によって、最短で1日で完了することも可能です。
※ 作成例では、以下のとおり株式数等が変更される前提となります。
・ 発行可能株式総数  400株 → 2000株
・ 発行済株式数    100株 →  500株
・ 資本金の額      100万円 →  300万円 (払込金額は1万円/株で、その1/2を資本金に組み入れる)

 

■3.その他に気をつけるポイント
上記■2の作成例は、特別な事情がない前提でのシンプルな手続を想定していますが、以下のような点について考慮すべき事情がある会社はご注意下さい。

 

有利発行

 

払込金額が募集株式を引き受ける者にとって特に有利な金額(=有利発行)である場合には、株主総会において有利発行の理由を説明する必要があります。一般的には時価を10%程度下回ると有利発行に該当すると考えられています。非上場会社の場合には市場価格が存在しないため時価評価が難しく、有利発行に該当するか否かの判断は容易ではありませんが、少なくとも過去の募集株式発行における払込金額や株式譲渡における譲渡価格を下回る場合には、有利発行として扱われる方が安全と考えられます。

 


現物出資

 

募集株式を発行する際に、金銭以外の財産(=現物出資財産)の出資を受けることも可能ですが、決議内容が一部異なるほか、原則として現物出資財産の価額につき、裁判所の選任する検査役の調査を受ける必要があります。検査役の調査には手間、時間、費用がかかりますので、検査役の調査が不要となる例外条件を満たさない現物出資を行う場合には注意が必要です。

 

外国為替及び外国貿易法

 

外国投資家が日本の会社に出資する行為は、外為法上の「対内直接投資」に該当するとして、外国投資家による事後報告が必要となる場合があります(会社の事業目的や外国投資家の国籍等によっては事前届出が必要となる場合もあります。)。また、出資を受ける会社においても、「外国から本邦へ向けた支払の受領」に該当するとして事後報告が必要となる場合があります。

 

金融商品取引法

 

募集株式を割り当てようとする人数が50人以上(6ヶ月の通算規定あり)となる場合には、金商法上の「募集」に該当するとして、有価証券届出書の提出などの手続が必要となる場合があります。有価証券届出書には、募集株式の発行条件のほか、会社の事業内容や経理状況などを法令に従って詳細に記載しなければならず、また一旦提出すると有価証券報告書による継続開示も義務づけられるため、非公開会社には現実的に対応が困難となります。したがって、多数の者を相手に増資を行う場合には、「募集」に該当しないよう弁護士など専門家のアドバイスを受けて慎重に対応される方が安全です。

 

投資契約

 

ベンチャーキャピタルから出資を受ける場合など、投資契約書の締結を求められることがあり、新株発行の手続とは別に検討が必要となります。また、既存株主と投資契約が締結されている状況で新株を発行する場合には、当該新株発行に対する投資契約上の制約の有無についても確認することが必要となります。

 

種類株主総会

 

ベンチャーキャピタルが出資している会社に多く見られますが、優先株式と普通株式など複数種類の株式を発行している場合には、特定の種類の株主によって構成される種類株主総会の決議が必要となる場合があります。

 

潜在株式の調整

 

優先株式や新株予約権などの潜在株式を発行している場合、募集株式の発行に伴い、潜在株式の行使価額等について調整が必要となる場合があります。

 

以上