創業者間の株式に関する取り決め
会社の設立にあたり、創業メンバーで株を持ち合うことは一般に行われることです。単純に当初の運転資金を出し合うという側面もありますが、創業メンバーは、創業当初は十分な報酬も得られず、無償に近い形でビジネスに打ち込むことも多く、株式を保有することで将来のIPOやM&Aにおいて、創業者利益を確保する機会を得るという面もあります。
創業メンバーが円満にビジネスを継続する場合もありますが、事業の方向性についての見解のずれや、家庭事情の変化等で、会社から離れざるを得なくなる創業メンバーが出てくるのもまれなことではありません。創業メンバーが会社を離れる際に、当該メンバーが保有している株式の処理が問題となるケースがよくあります。
もちろん、株式という形で投資をした以上、会社を離れても、そのまま株主として残ること自体は全く違法なことではありません。しかし、IPOやM&Aを目指すベンチャー企業の場合、株式というのは、単なる投資資金という意味合い以上に、自分たちの努力で企業価値を上げ、それによって自分が保有している株式をIPOやM&Aによって、何倍、何十倍にもしたいという想いが入っている側面が強く、会社を辞めた創業メンバーが、残ったメンバーの努力にただ乗りする形で、将来の創業者利益を得ることは、残ったメンバーおよび創業メンバーよりも持株比率が低い役職員のモチベーションの観点から看過できない状況となることも多いのが現実です。
その場合、円満に話し合って、会社の社長をはじめとする役職員が買い取ることができればよいのですが、価格で折りあわず、紛争となるケースもあります。そのような紛争は、株式に関することだけに社員に処理を任せるわけにもいかず、ビジネスに邁進するべき社長にて、多大な時間と精神的なストレスを負担することになります。したがって、創業メンバーの間で、株式の取り扱いについて予め取り決めておくことは重要です。とりあえず、創業メンバーその他の役職員が会社を離脱した場合に、社長が株式を当初の取得価格で買い取ることができる形の雛型を用意しましたので、下記をご参照下さい。
なお、当初から買取価格を決めていたとしても、実際に買い取る段階で、株式の時価が買取価格を超えていたような場合には、課税が発生する可能性がありますので、実際の買取りにあたっては、税理士等の税務の専門家とご相談下さい。
- 創業株主間の株式保有の取り決めに関する雛型はありますか。
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創業者にストックオプション(新株予約権)を発行しておこうと思いますが、特に制限などはないでしょうか。
新株予約権は、その行使のときに課税が生じないよう、課税上の優遇を受けられる税制適格要件を満たすよう発行するのが一般的です。特に、いわゆる大口株主(未上場会社の場合1/3超の持株比率を有する株主及びその配偶者等の特別関係者)は税制適格の対象外となるため、持株比率の高い時期に創業者が新株予約権の付与を受ける際は、この点を確認する必要があります。無償発行でなく有償による公正時価発行の方法もあるため、そのような方法も含めて最適な方法を税務顧問とも相談の上で検討した方が良いと考えられます。
作成日:2021年12月20日 -
友人数名で出資し、共同で設立するのですが、万一将来仲違いをした時にどうなってしまうか不安です。何か事前にとれる対策はないでしょうか。
設立に先立って、設立に関する出資等の条件や、設立後の会社運営や株式所有関係について、出資者間で予め契約を締結することが考えられます。各出資者の役員や従業員への就任、役員等を退任した場合の株式売却義務(他の当事者による買取権)、株式売却の制限(売却しようとする場合に他の当事者が優先買取権を有する等)などを定めることが考えられます。これにより、単なる投資でなく会社への貢献を前提とする出資であることを明確にし、貢献のなくなった出資者には株主から外れてもらうことや、無関係な第三者への株式流出を回避することが期待できます。
作成日:2021年12月20日 - すべてを表示
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