新株予約権付社債の設計

ベンチャーキャピタルの方へ

ベンチャーファイナンスにおいては、株式とローンの中間的なものとして、新株予約権付社債(CB)が使用される例も多くなっています。

CBは社債であるため、万一、清算した場合に株式に対する出資の払い戻し(残余財産の分配)よりも優先する「債権」であり、また、返済に関して分配可能額等の規制もなく、元本と利息の支払請求が容易であることから、株式よりも回収面で有利といえます。

他方、株式への転換も可能であるため、株価が上昇した場合に株式に換えて売却することでキャピタルゲインが得られるため、株式投資のメリットも享受することができます。CBは資本ではなくあくまでも負債であるためベンチャー企業側としては、CBより株式の投資を望むのが通常ですが、ファイナンス交渉において、ベンチャー企業側が受け入れるのであればCBはベンチャーキャピタルにとってとても魅力的な投資手法といえます。

CBについては、会社法について社債管理者の要否や現物出資規制の問題があり、金融商品取引法に対応した設計にする必要があるので注意が必要です。社債をいくつに分割するべきか、新株予約権の個数をどうするべきかなどの経済条件的な面も、上記の会社法及び金融商品取引法の規制に抵触しないように慎重に確認する必要があります。また、新株予約権の部分は登記事項であるため、複雑な設計の場合には法務局が登記を受け付けてくれるかについても確認する必要があります。

AZXでは、典型的なCBから、特殊な条項の設計まで数多くのCBの発行をサポートしてきた実績があります。具体的には、CBの要項及び契約書の作成、CBの設計に関する契約交渉、特殊な条項についての法務局との折衝、CBの発行手続についての必要書類の作成及び登記手続などを行っております。

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  • 新株予約権付社債において割増償還は可能なのでしょうか。
    会社法では償還すべき金額と券面額は常に一致することとされています(会社法第676条第2号、第697条第1項第2号参照。)。実務上の必要性、契約自由の原則から認められるとの見解もありますが、断定はできないため、割増償還は不可能という前提で検討した方が安全と考えられます。
  • 新株予約権付社債はどのようにして譲渡するのでしょうか。
    証券不発行の場合には、譲渡人と譲受人との意思表示により譲渡することになりますが、証券発行の場合には、原則として意思表示に加えて証券の交付が必要となります(会社法第255条第2項、第687条)。
    なお、新株予約権付社債の譲渡にあたって、新株予約権付社債のうちの新株予約権部分又は社債部分の一方のみの譲渡はできないのが原則ですので(会社法第254条参照)、この点についてもご留意下さい。
  • 未上場会社に対し、新株予約権付社債(CB)での投資を考えているのですが、留意事項を教えて下さい。
    未上場会社におけるCBの発行に当たっての留意事項は多岐に渡りますが、特に、下記①から③までの規制が問題となるケースが多いため、下記の規制を踏まえてCBを発行する必要があります。
    ①社債管理者の設置について
    CBを発行する場合には、原則として社債管理者の設置が必要となります(会社法第702条)。但し、(i)各社債の金額が1億円以上である場合、又は、(ii)ある種類の社債の総額を当該種類の各社債の金額の最低額で除して得た数が50を下回る場合には、例外的に社債管理者の設置が不要となります(会社法第702条但書、会社法施行規則第169条)。この点、社債管理者の設置にはコストがかかるため、(i)又は(ii)の要件を満たすようにCBの設計を行うのが一般的です。
    ②金融商品取引法上の募集規制について
    CBの発行が金融商品取引法の「募集」に該当する場合、有価証券届出書や有価証券報告書等の提出義務を負うこととなります(金融商品取引法第4条第1項、第24条第1項第3号)。かかる義務は上場前の会社にとっては極めて重いものであるため、CBの発行に当たってはかかる「募集」に該当しないよう留意する必要があります。詳細は省略いたしますが、重要なポイントとしては、CBが下記の(i)の要件及び(ii)の(a)又は(b)の要件を満たす設計とする必要があります。
    (i) CBを発行する相手方の数が50名未満であること(金融商品取引法第2条第3項第1号、金融商品取引法施行令第1条の5)
    (ii) (a) CBを取得し、又は買い付けた者が、その取得又は買付けに係るCBを一括して譲渡する場合以外に譲渡することが禁止される旨の制限が付されていること(金融商品取引法第2条第3項第2号ハ、金融商品取引法施行令第1条の7第2号ロ、ハ、金融商品取引法第2条に規定する定義に関する内閣府令第13条第1項、第3項第1号イ(1))
    (b) CBの枚数又は単位の総数が50未満であり、表示されている単位未満に分割できない旨の制限が付されていること(金融商品取引法第2条第3項第2号ハ、金融商品取引法施行令第1条の7第2号ロ、ハ、金融商品取引法第2条に規定する定義に関する内閣府令第13条第2項、第3項第1号イ(2))
    ③現物出資規制について
    転換社債型新株予約権付社債は、新株予約権を行使する際に社債を現物出資するものであり、原則として検査役の調査が必要とされています(会社法第284条第1項)。検査役の調査は発行会社にとって負担が大きいところ、会社法第284条第9項第1号、第2号又は第5号(以下に記載します。)に定められたいずれかの例外に該当する場合には検査役の調査が不要となることから、これらの例外に該当するようにCBの内容を設定するのが一般的です。この点、(iii)を満たす設計にするために、新株予約権の行使があった場合には、社債について期限の利益が喪失されたものとみなす旨を定める例が多く見受けられます。
    (i) 行使された新株予約権の権利者が交付を受ける株式総数が発行済総数の1/10を超えない場合(会社法第284条第9項第1号)
    (ii) 現物出資財産(社債)の価額の総額が500万円を超えない場合
    (iii) 現物出資財産(社債)の弁済期が到来しているものであって、社債の価額が社債にかかる負債の帳簿価額を超えない場合
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